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【紅茶の違い、選び方を専門家が解説!】ダージリン・アッサム・セイロン・アールグレイ

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紅茶

はじめに

紅茶好きでなくとも一度は耳にしたことがある、ダージリン、アッサム、セイロン、そしてアールグレイ。

何気なく気分で選んだりしていますが実は知らないことばかり。

それぞれの違いや選び方のポイントなどを、お茶のバイヤーとして世界中を飛び回る専門家が分かりやすく解説します。

目次

  • 簡単にまとめると
  • ダージリンの特徴
  • アッサムの特徴
  • セイロンの特徴
  • アールグレイの特徴
  • まとめ

簡単にまとめると

ダージリンアッサムは、紅茶大国インドの産地名、そこで作られた個性際立つ紅茶

セイロンは、紅茶生産国スリランカの旧称でスリランカ産の紅茶全般を指す

アールグレイは、イギリスが生み出した柑橘の香りのフレーバードティーで産地は様々

ダージリン(Darjeeling)の特徴

ダージリンの場所

インド北東部、丸で囲った中の小さな赤い点がダージリンの場所。インド全体の1%にも満たない小さな産地で世界的に名を馳せる紅茶が作られている。

味わいは薄めで、標高の高さがもたらす華やかでフルーティーな香り立ちの良さが最大の特徴だが、品質の良いものは価格が高く、一般的に流通するものはそれほど香らない。

品質がピークに達する「旬」が存在し、年に3回春・夏・秋のそれぞれ約1カ月の間だけ、お茶とは思えないようなずば抜けて高品質なお茶が作られる。

産地と栽培環境

インドの北東部に位置する西ベンガル州のダージリン地方で生産され、標高約600~2000メートルの山岳地帯に位置しています。この地域の気候は、一年を通じて冷涼で湿度が高く、霧が多いため、茶樹はゆっくりと成長し、葉に複雑な風味を蓄積していきます。

1800年代にイギリスの産業スパイが中国から持ち出した種を植え始めたことから、中国系の品種をベースにして現在に至るため、紅茶産地としては珍しい、中国茶のような多彩な香り立ちが現れるのも大きな特徴の一つ。

約90の農園が存在し、フランスワインのシャトーのようにそれぞれの作るお茶はおよそ100kgごとにロットナンバーが割り振られ、風味の出来を競い合っています。

味わいと香りの特徴

広く流通しているタイプのダージリン

一般的に流通しているタイプと、専門店で販売されるような高価なタイプで風味が大きく異なります。

スーパーでも見かけることができる手ごろな価格のタイプは、通常の紅茶よりも味わいが薄めだな?と感じる方が多いでしょう。ほのかに果実のような香りはしますが、ダージリンの持つ感動的な特徴を十分に感じられるものは多くありません。

ミルクを入れると味が薄まり、レモンを入れると渋みが強くなるため、ストレートで楽しむのがおすすめです。

ファーストフラッシュ(First flush/春摘み)
ダージリンセカンドフラッシュ
セカンドフラッシュ(Second flush/夏摘み)
オータムナル(Autumnal/秋摘み)

専門店で販売されている高価なタイプについては、ダージリンティーの「旬」ごとに、ダージリンの個性をよく感じられるお茶を見つけることができます。

また、農園の名前やロットナンバーが商品名に冠されていることも多く、やや専門的で難しい印象を受けます。実際価格は高くても個性が分かりにくいお茶もあるため、よりよい風味に出会うためのポイントとしては、販売されている方に聞く事をおすすめします。お店の方が個人として迷いなく薦めてくるものや、POPなどで分かりやすく絶賛されているものを選ぶと、今までに出会ったことのない素晴らしいお茶に出会える可能性が高いと思います。

3月後半から4月にかけて収穫される、ファーストフラッシュ(First flush/春摘み) は、若葉のようなさわやかな風味。リキッドの色は黄色からオレンジ色と薄めで、農園やロットによりみずみずしい花の香りやブドウのような果実香が際立つものがあり、紅茶の枠にとらわれない、非常に自由で魅力的な風味をもっています。

5月から6月にかけて収穫される、セカンドフラッシュ(Second flush/夏摘み) は、味わい香りともにフルーティーで豊潤、力強く心地よい渋みもあるため紅茶好きに最も好まれるシーズンです。リキッドの色はルビーのような赤みを帯びた茶色です。特にウンカという小さな虫が葉を噛んだお茶は「マスカテルフレーバー」と呼ばれる強いマスカット香を持つ特別なお茶になります。

10月後半から11月にかけて収穫される、オータムナル(Autumnal/秋摘み) は、セカンドフラッシュに近い深みを持ちながら渋みは非常に少なく甘みが際立ちます。リキッドの色はほうじ茶のような落ち着いた茶色が多くみられます。現地で少しロースト感を強めに、栗やナッツを思わせる香り立ちに仕上げられるお茶も多く見受けられ、たくさんの方に親しみやすい個性になっています。他のシーズンに比べ価格も比較的おさえられています。


飲み方と食べ合わせのおすすめ

紅茶と和菓子

紅茶全般にいえますが、沸かしたての熱湯を使用し、ポットやカップを温めるなどしてなるべく温度が下がらないように抽出すると、格段においしく入ります。

ダージリンはストレートがおすすめです。アイスでもホットでも楽しめます。

一般的な紅茶よりも軽やかで繊細、緑茶や中国茶のような味わいの個性を持つため、和菓子がよく合います。羊羹やお饅頭、練り切りやかりんとうなどとももすんなり馴染むため、おすすめです。

洋菓子だと、レモンクッキーや粉糖をふりかけたスノーボールクッキーなど小麦やバターの香りが強くない軽めのものがおすすめです。セカンドフラッシュのような濃厚なタイプには、チーズを挟んだサンドイッチなどの軽食もよく合います。

アッサム(Assam)の特徴

紅茶生産量世界No.1のインドでも最大産地
お茶の原産地のひとつでもあり、茶の木が育つ理想的な成育環境となる、高温多湿で標高の低い、川沿いの肥沃な土地に茶園が広がる。

香りはモルティー(麦芽のような甘い香り)で少し地味だが、力強いコクと甘みを持ち、ミルクにもよく合うため世界中で紅茶ブレンドのベースとして広く使われ、愛されている。

日差しが最も強い夏が「旬」となり最も風味が充実する。一般的に流通はあまりしないが、ピーク時のアッサムティーには新鮮なトマトを思わせる香りや、「大地の香り」と評される複雑で強い香りが現れる。

産地と栽培環境

ダージリンよりもさらに東、南はバングラディシュ、東はミャンマー、北はブータンに挟まれた、離れ小島のように広がるインド、アッサム州。温暖湿潤なジャングルを切り開いて作られた広大な茶園には、野生の象も生息しています。

お茶の2大品種の一つであり、イギリスによって世界各地に広められた、アッサム種が発見された土地で、濃厚で力強く甘いコクのある紅茶を作ります。

コロコロと丸い形状のCTC(Crush”潰す”・Tear”引き裂く”・Curl”丸める”)という製法でミンチのように作られた量産型の紅茶がメインとなる。

味わいと香りの特徴

紅茶生産量世界一と言えるほどたくさんの紅茶が作られているのでもちろん例外はありますが、基本的に渋みの少ない、濃くて甘みの強い紅茶が作られています。

香り立ちは大きく2系統、モルティーと表現される麦芽のような落ち着いた甘い香り立ちのものと、力強さの中にトマトを思わせるさわやかな青さの感じられるタイプ。

リキッドは深い琥珀色で濃密なものが多く、ミルクとの相性が非常によい。ミネラル分の多い硬度が高い水で入れると風味がよりまろやかに濃厚に感じられるため、イングリッシュスタイルのミルクティーによく用いられます。

飲み方と食べ合わせのおすすめ

紅茶全般にいえますが、沸かしたての熱湯を使用し、ポットやカップを温めるなどしてなるべく温度が下がらないように抽出すると、格段においしく入ります。

ストレートでももちろん楽しめますが、落ち着いた香りと濃厚なコクと甘みは、ミルクとの相性が抜群です。

ミルクをスプーン一杯ほど少量を垂らす、お湯の量を半分にして濃厚に出し、ミルクと半々に割るカフェオレスタイル、煮出してロイヤルミルクティーや、スパイスを加えてインド式チャイなどミルクティーに関しては万能です。

食べ合わせは、バターをたっぷり使ったスコーンや、クリームチーズを添えたパンケーキ、あるいはチョコレートブラウニーなどのしっかりとした味わいのスイーツ類が良く合います。

セイロン(Ceylon)の特徴

スリランカは紅茶生産量世界第4位。日本では古くから輸入紅茶の代表格として知られ、当時の流通名から旧国名の「セイロン」が定着しました。

多くの人がイメージする「紅茶」の味わいといえます。

標高の高さなどから様々な生産エリアに分かれ、それぞれに個性的なお茶を作っている。その多彩な個性を生かしてバランスよくブレンドされたものが世界中で流通しており、風味と品質の点で高い評価を受けています。

産地と栽培環境

スリランカは、熱帯の気候と豊かな土壌に恵まれており、世界三大紅茶の一つに数えられるウバ(Uva)をはじめとして、標高によって独自の特徴が生まれます。

標高1200メートル以上の高地で生産されるハイグロウンティー(ウバ・スワラエリア・ディンブラの一部)は、芳醇で強い香りが特徴です。

標高600メートルから1200メートルの中間地域で生産されるミディアムグロウンティー(キャンディ・サバラガムア・ディンブラの一部)は、しっかりした紅茶らしい香りと味わいがありバランスに優れています。ます。

低地で栽培されるローグロウンティー(ルフナ)は、濃厚な色合いと力強く個性的な味わいが魅力で、主にロシアや中東イスラム諸国で愛されています。

味わいと香りの特徴

セイロンブレンド

一般的に目にするセイロンティーの特徴としては、「紅茶らしい」「バランスがいい」「飲みやすい」という事がいえます。日本では出回っている量も多いので、セイロンティーのブレンドを選んでおけば大きな失敗はないでしょう。

活用範囲も広く、ストレートはもちろん、レモンや砂糖を加えたり、ミルクを入れてもおいしく楽しめます。

リキッドも紅茶らしい赤茶色で安心感があります。

ただし、セイロンの中でも個別の産地が明記されたお茶についてはそれぞれの個性が際立った風味のものがあるため、自身の好みを把握して選んだ方がよいでしょう。

飲み方と食べ合わせのおすすめ

紅茶全般にいえますが、沸かしたての熱湯を使用し、ポットやカップを温めるなどしてなるべく温度が下がらないように抽出すると、格段においしく入ります。

ミルクを入れたい場合は、お湯の量をミルクを入れたい割合に合わせて少なめにして濃く抽出すると、よりおいしく楽しめます。ミルクもあらかじめほんのり温めておくと絶品に仕上がります。

食べ合わせについては、あらゆる食事、スイーツに優しく寄り添い、いわゆる「紅茶」が飲みたい!というときに幅広く活躍してくれます。

特にバランス型のブレンドやミディアムグロウンのセイロンは、チョコレートとの相性が抜群です。

アールグレイ紅茶の特徴

アールグレイは香りがいい!という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。

それもそのはず、アールグレイはこれまで紹介したものとは大きく異なる紅茶です。

イタリア原産の柑橘の一種、ベルガモットという果物の香りを、一度完成した紅茶に後から付香した「フレーバードティー」の一種で、アップルティーやジャスミン茶と同じ分類になります。

紅茶だけでは出せない、はっきりとした爽やかな香りを持ち、ベルガモットから抽出した香り成分を一部に使用したものから、完全に合成香料で付香したものまで、作り方にも様々なタイプがあります。

ベースとなる紅茶も製造する企業や地域により様々異なります。

ブレンドの歴史と背景

Charles Grey, 2nd Earl Grey (1764-1845)

アールグレイの起源は18世紀に遡ります。
諸説あり確定はできませんが、イギリスの首相を務めたチャールズ・グレイ伯爵(伯爵は英語でEarl)にちなんでこのお茶は名付けられたと言われ、茶商がインドや中国から輸入された茶葉に、ベルガモットの香料を加えたことから始まりました。

現在でも紅茶にレモンを加える飲み方があるように、紅茶と柑橘類の香りは非常に相性がよく、ベースの紅茶に洗練された自然な香り高さを与えてくれます。

当時のお茶はとても高価で、香り高いものは非常に手に入りにくかったと考えられるため、アールグレイは19世紀から世界中に広く普及していきます。

今では各地の多様な食文化に浸透しており、まさにフレーバードティーの古典といえます。

味わいと香りの特徴

セイロン紅茶をベースにしたアールグレイ 

様々なアールグレイに共通する特徴は、その柑橘系のさわやかな香りです。ベルガモットはオレンジやレモンなどの代表的な柑橘類とは異なる、複雑で個性的な香りを持つため、多くの人々は柑橘の香りだとは意識せずに楽しんでいます。

逆に紅茶本来の香りとは異なるため、やや人工的な印象を受け、強い香りが苦手な方は避けた方がよいでしょう。

味わいはベースとなる紅茶によって様々ですが、一般的にはセイロンや中国紅茶、複数産地のブレンドティーが多く、ストレートでもミルクでも幅広く楽しめるものになっています。

ただし、ブランドによりミルクティーに特化したものや、ダージリンをベースにしたタイプなど個性が異なるアールグレイを販売していたりするため、説明書きを読んだりお店の方に尋ねたりすることをおすすめします。

飲み方と食べ合わせのおすすめ

紅茶全般にいえますが、沸かしたての熱湯を使用し、ポットやカップを温めるなどしてなるべく温度が下がらないように抽出すると、格段においしく入ります。

香りが強いのでリフレッシュに最適です。職場やカフェなどの外出先でも香りがはっきりと感じられる点も大きな魅力。

食べ合わせは、紅茶が味わいを引き締め、ベルガモットの香りがさわやかさを強めてくれるため、濃厚なものからさわやかなものまで、食事やスイーツ全般によく合います。ケーキやサンドイッチなどが特におすすめです。

ストレート・ミルク・アイスティーと幅広く活用できます。

まとめ

紅茶はその産地やブレンドによって、多種多様な特徴と楽しみ方があります。インドやスリランカの豊かな自然環境で栽培されるダージリンやアッサム、セイロン紅茶は、それぞれ独特の風味と認知を誇っています。エレガントでフルーティーな香りを持つダージリンは、特にストレートで楽しむとその繊細さが際立ちます。アッサムはその濃厚さとコクが特徴で、ミルクティーにしてその甘みを堪能するのが一般的です。セイロン茶は中庸のバランスで、様々なアレンジティーにも対応できる幅広さがあります。

一方、アールグレイは紅茶にベルガモットの香りを加えたもので、英国で生まれたフレーバードティーとして世界中で愛されています。その歴史的背景から、香り高い午後のひとときにぴったりの紅茶ともいえます。アールグレイの華やかな香りは、シンプルな焼き菓子との相性も抜群で、特にアフタヌーンティーの席にぴったりです。

これらの紅茶のどれもが、私たちの生活の中で様々なシーンを彩ってくれます。食事やスイーツと合わせたり、またはリラックスの時間に一杯の紅茶を楽しむことで、日常の中に少しの贅沢と心の余裕をもたらします。それぞれの特長を理解し、選び方や淹れ方を工夫することで、紅茶をより一層楽しむことができます。紅茶の豊かな世界に触れることで、私たちはその深い魅力をもっと感じることができるでしょう。ぜひ、あなた自身のお気に入りの一杯を見つけて、紅茶のある生活を楽しんでください。

この記事の著者

中村 文聡

東京・目黒区の碑文谷にある、MATRA tea atelier(マトラ ティーアトリエ)主宰。1980年12月16日生まれ。連続する日常からふわっと浮き上がるようなお茶の力が人を豊かにすると感じてお茶の世界に飛び込み、15年間、大手お茶専門店でバイヤーとして世界中を飛び回って、各地の自然、生産者の想いを知る。
2022年、世界のお茶をもっと身近にするため独立。
圧倒的な自然や、卓越した人の想いがつくるすばらしい「お茶」と出会うとき、人は何かを感じ、驚き、感動します。言葉には表せないその心の動き、その先には出会った人それぞれの変化が生まれイメージが広がる。そんなシーンをできるだけ多く作ることが私の目標です。

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