【本格レシピ】プロが教えるスープのような究極のチャイの作り方
本場インドでも見つけられなかった、理想のチャイ
お茶のバイヤーとして世界各国を回る中、ミルクやスパイスを入れて濃厚に煮出すインド式の濃厚なチャイには数多く出会ってきました。
仕事と直接関係があるわけではないのですが、町に軒を連ねる屋台やスタンドから高級ホテル、農園のマネージャーハウス、オフィスビルの中、時には一般のご家庭まで、数々のチャイと出会い、味わい、感動する中で、気が付けばその味の可能性を追い求めている自分がいました。
インド紅茶の聖地、コルカタのチャイスタンドで飲んだ刺激的な一杯、日本の素晴らしいチャイ専門店での体験。それでもなお私の中で「理想のチャイ」への追求が止むことはありません。
今回ご紹介するのは、そんなお茶バイヤーが自分なりの理想を形にした究極のチャイレシピです。
イメージとしては、「繁華街から少し離れたインドの路地裏に隠れ家のように佇む名店で、職人が選りすぐりのスパイスと紅茶で丹念に仕込む、まるでスパイススープのような濃厚なチャイ」。
プロのお茶バイヤーとしての経験を全て注ぎ込んだ、本場インドでもお目にかかったことのない、最高のレシピをお届けします。
材料と道具の準備
材料(2-3人分
材料 | 分量 | 備考 |
---|---|---|
水 | 450ml | 日本の一般的な天然水 |
グリーンカルダモン | 3g | ホール |
クローブ | 1.5g | ホール |
黒コショウ | 1.5g | ホール |
クミンシード | 1.5g | ホール |
セイロンシナモン | 0.6g | ホール、スリランカ産を選ぶ |
ローレル | 一欠片 | 2cmほどにちぎって |
カレーリーフ | 一枚 | 生でもドライでも |
生姜 | 一欠片 | 生の生姜を5回ほどすり下ろす |
アッサムCTC紅茶 | 20g | ミルクティー向きのものを選ぶ |
きび砂糖 | 20g-30g (お好みで) | 白砂糖でも可 |
牛乳 | 300ml | オーソドックスな無調整乳 |
サフラン | 2-3本 | 香りが豪華になります、オススメ |
必要な道具
- 鍋(できれば2つ)
- スパイスミル(またはすり鉢)
- すりおろし金
- 茶こし
- 計量カップ
- お玉と味見用の小さなカップ
- ポット
チャイの作り方
1.スパイスの用意と下準備
感動的な深い味わいを引き出すポイントの一つが、スパイスの選び方です。
パウダー状ではなく、形がそのまま残ったホールスパイスを用意し、できれば直前に粗めに砕くことでじっくりと風味を抽出でき、煮出した後も素晴らしい余韻と味わいが残ります。
特にカルダモンはグリーンカルダモンの色が鮮やかなものを(古いものは黄色く色あせています)、シナモンはスリランカ産とそれ以外とでとても大きく風味が異なるため、ここではぜひスリランカ産を選びましょう。
- 各スパイスを粗めに砕きます
- 生姜はすりおろして準備します
- 水450mlを鍋に入れて沸騰させます
2.スパイスと紅茶の抽出
この工程が、チャイの深いコクのある味わいを決定づけます。
先にスパイスと紅茶をしっかり抽出せずに牛乳をいれてしまうと、風味が十分に引き出されず、味が薄くなってしまうので注意しましょう。
- 沸騰したら弱火にし、準備したスパイスを全て投入
- 3分間じっくり煮出します
- アッサムCTC紅茶を加え、さらに2分煮出します
ポイント:鍋の底が見えなくなるまで、弱火のまましっかり色を出すこと - きび砂糖を加えて完全に溶かします
紅茶選びのこだわり
アッサムCTC紅茶
アッサムはインド北東部に広がるインド最大の紅茶産地で、太陽の光が降り注ぎ野生の象が行き交う広大な茶園で、世界に流通するコクのある紅茶が作られています。
同じくインドの産地である山岳地帯のダージリンのような繊細な香りはありませんが、タンニンという紅茶の「濃さ」の元になるポリフェノールが豊富に含まれているため、チャイに力強いコクを与えてくれます。
CTCというのはCrush(潰す)Tear(引き裂く)Curl(丸める)の頭文字をとった紅茶の作り方で、CTC製法による茶葉は、成分が多く・早く抽出できるのが特徴です。
チャイをつくるときは、もちろん一般的にミルクティー向きと書かれている紅茶なら大丈夫ですが、ぜひアッサム産の丸いCTC紅茶をおためしください。
3.ミルクの追加と煮出し(最重要工程)
ここからが、本場のチャイとも、一般的なチャイとも異なる重要な工程です。
- 火力を最大にし、牛乳を加えます
- 重要:20回以上の沸騰
- 泡が吹きこぼれる直前で火から外す
- 落ち着いたら再度強火にかける
- この作業を20回以上繰り返します
20回以上強火での沸騰を繰り返すことで、牛乳のいい意味ではフレッシュな、逆の意味では生っぽい感じがなくなり、濃く煮出した紅茶とスパイスが自然に溶け合っていきます。
このミルクと紅茶が溶け合う一体感こそが、このレシピの一番のポイントです!
さらに、先に入れているきび糖がこの沸騰によって徐々にカラメル化していくため、コクと香りがより一層深まっていきます。
- ミルクの沸騰回数による味の変化
- 1-3回:ミルクリッチな味わい
- 2-10回目:やや乳臭さが気になる段階
- 20回以上:
- 驚くほど軽やかな口当たり
- スパイスと紅茶の香りが体に染み渡る
- 深い甘みとさわやかな後味
何度も沸騰させている途中で、ぜひ味見もしてみてください。
最初はミルクティー!という感じの牛乳が強いリッチな味わい(アイスチャイにする場合や、気分によっては沸騰一回目の直前で火を止めるのもおすすめです。日本で紹介されているレシピのほとんどはこちらを推奨しています。)
そこからだんだんと牛乳の香りが強く出てきて、一度は味のバランスがくずれます。
しかし、ここで我慢して20回ほどまで沸騰を続けると、急に味わいがふっと軽やかになり、牛乳と紅茶が完全に一体化する瞬間が訪れます。
4.泡立て、仕上げと注ぎ方
出来上がったチャイは、この後できるだけ泡立てて中に空気をたくさん含ませてください。
この空気を含ませる工程は、インドのチャイスタンドではほぼ必ず行われる方法で、そうすることにより味わいがよりまろやかに、香りはより華やかになっていきます。
- もう一つの鍋にチャイをなるべく高い位置から泡立てるように注いで移します(周囲を汚さないよう、できるだけの高さでOK)
- 元の鍋に同じように移し替えます
- 4-5回移し替えを続けます
- 茶こしでスパイスと茶葉を濾しながらポットに移し替えます
- ポットからグラスやカップに、やや高い位置から注ぎます
- サフランを2-3本浮かべて完成!
簡単な作り方早見表
- 水450ml沸騰→弱火
- スパイス投入→3分煮出し
- 紅茶20g→2分煮出し
- 砂糖20-40g溶かす
- 牛乳300ml→20回以上沸騰
- 泡立てながら濾して、サフランを浮かべて完成
おわりに
本場インドにもない、スパイススープのような味わいの究極のチャイ。
作るのには少し手間がかかりますが、手間をかけた分だけのこれまでに出会ったことのないチャイのおいしさに出会えます。
ぜひご家庭でもお楽しみください。
材料について詳しく知りたい方は、スパイス図鑑や一般的な紅茶の選び方などもご覧ください。
作るのは好きだけれど、材料をいろいろこだわって集めるのは大変そう…、という方には、プロが厳選した新鮮なインド・スリランカスパイスと、チャイに最適なCTC紅茶をブレンドした「オリジナルチャイミックス」もご用意しておりますので、ご利用ください。
作るのがとても面倒くさい…です。 でもその先に今まで知らなかったすごい味わいとの出会いがある、と自信をもっておすすめします。 いろいろ用意しないといけないわけではなく、ただひたすら鍋と向き合って何度も沸騰させるチャイです。 作っている間の集中時間も楽しんでみてください。 インドに行くたびにチャイを飲み続け、300杯以上試して、どれもとてもおいしかったけれど、「チャイはもっとおいしくなるはず!」という思いが拭いきれず、オリジナルレシピを考案しました。 日本にもインドにもない究…